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雨宮ぐみ 2026/10/10 公開 2026/10/13 13:23 更新
君と見た最後の海
~海に咲いた、二十歳の恋~
太平洋戦争末期。
海軍の回天基地が置かれた町で、二十歳の青年・さとるは、日々厳しい訓練を続けていた。
町の人々から距離を置き、家族からも「訓練生には声をかけてはいけない」と言われていたさとる。
そんな彼が、港でたびたび見かける一人の女性に心を奪われる。
美しい黒髪と白い肌。
誰かと楽しそうに笑う彼女の姿を、さとるは遠くから見つめることしかできなかった。
彼女の名前は、薫。
同じ二十歳だった。
ある夕暮れ、海を見下ろす高台で、さとるは一人泣いている薫を見つける。
声をかけてはいけない――。
そう分かっていながらも、さとるは初めて薫に声をかける。
それが、二人の運命を変える出会いだった。
誰にも知られてはいけない二人の時間。
海辺で交わす言葉。
高台から眺める夕日。
戦争が終わったら何をしたいか、そんな未来の話。
ほんのわずかな時間だったが、二人はいつしか互いを愛するようになっていく。
しかし、さとるのもとに出撃命令が下される。
愛する人との未来を夢見た二人に、残された時間はあまりにも短かった。
薫は、さとるを失うことを受け入れられず、ある決意をする。
「私も、さとるさんと一緒に行く」
しかし、回天は一人乗り。
さとるは薫の願いを拒絶する。
それでも薫は諦めなかった。
そんな二人の秘密を唯一知っていた、さとるの仲間・剛。
剛は二人に、訓練用の魚雷なら二人で乗ることができると告げる。
そして二人は、最後の時間を共に過ごすため、訓練用魚雷に乗ることを決める。
出撃の日。
静かな海を前に、さとると薫は互いの手を握る。
二十歳。
あまりにも若い二人に、本来なら未来があったはずだった。
けれど、その未来は戦争によって奪われた。
二人が最後に選んだのは、別々の道ではなかった。
愛する人と、最後まで一緒にいること。
そして二人を乗せた魚雷は、静かな海へと消えていく。
――二十歳の恋の行き先は、未来ではなく、二人で向かった最後の海だった。
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