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伊佐波瑞樹 2026/10/16 公開 2026/10/30 07:48 更新
俺は、ただ本が読みたいだけだった。
それも、剣と魔法の大冒険でも、血沸き肉躍るバトルものでもない。
静かな場所で、誰にも邪魔されず、大好きな恋愛小説を読みたい。
――本当に、それだけだったはずなのに。
恋愛小説をこよなく愛する主人公は、今日も物語の中の恋に浸るため、本を開く。
すれ違う二人。
なかなか想いを伝えられないヒロイン。
鈍感な主人公。
少しずつ縮まっていく距離。
そんな恋愛模様を本の外から眺めることこそ、彼にとって最高の時間だった。
自分が恋愛する必要なんてない。
むしろ、面倒だから絶対にしたくない。
ところが――現実は、彼を放っておいてくれなかった。
なぜか距離を縮めてくる女の子。
本人だけが気づかない好意。
周囲から見ればどう考えてもラブコメなのに、当の本人は恋愛小説を読むことしか頭にない。
「いや、俺は本が読みたいだけなんだけど!?」
恋愛小説なら誰よりも読んできた。
物語の中なら、誰と誰がくっつくのかだって予想できる。
それなのに――自分へ向けられた恋心だけは、まるで分からない。
これは、恋愛小説を読む側でいたかった少年が、気づけば自分自身のラブコメを始めてしまっていた物語。
本人の望みはただ一つ。
今日こそ静かに、本を読ませてください。
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