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姫野ことは(旧名:KOTOHA) 2026/10/09 公開 2026/10/09 20:20 更新
「もう、お姉様は用済みなの」
十一歳で母を亡くしてから八年間。
庶子のソフィアは、家族に「助け合うのは当然」と言われ、給金も休みもないまま、マルール子爵家で働き続けていた。
掃除、洗濯、料理、帳簿管理、仕入れ、価格交渉。
さらには使用人二十三名の管理や来客対応まで、屋敷の仕事はすべてソフィアに任されていた。
それでも、家族に頼られることが嬉しかった。
自分が役に立てているなら、それで十分だと思っていた。
しかし、異母妹の結婚が決まると、子爵家は新しいメイドを三人雇う。
「もう、お姉様は用済みなの」
その一言で、ソフィアは八年間働いた家を追い出された。
行くあてもなく、翌日訪れたのは、偶然見つけた侯爵家の使用人募集だった。
「採用です」
「え?」
面接開始から、わずか十分。
ソフィアは侯爵家に即採用される。
しかも、今までと同じように働いているだけなのに――。
「素晴らしい働きぶりです」
「こんなに助かるとは思いませんでした」
「給金は、提示額の倍をお支払いしましょう」
褒められ、感謝され、正当な給金まで受け取る日々。
自分がどれほど優秀だったのかも知らないソフィアは、ただ首を傾げるばかりだった。
そんな彼女に、侯爵家の跡取り息子が告げる。
「僕と結婚してほしい」
「え――――っ!?」
一方その頃、ソフィアを「用済み」と切り捨てたマルール子爵家では、屋敷の仕事も領地の管理も立ち行かなくなっていた。
家計は傾き、評判は落ち、ついには没落寸前。
「頼む。帰ってきてくれ!」
そう懇願されても、もう遅い。
だってソフィアは今、必要とされる場所で、幸せに働いているのだから。
「こちらでは、まだ用済みではないみたいなので」
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