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八雲 海 2026/10/28 公開 2026/10/31 08:07 更新
一九五九年、冷戦下のアメリカ。
戦闘機は年ごとに高く飛び、人間を宇宙へ送る計画も動きはじめていた。だが、高い空で機体を失った飛行士が、生きて地上まで帰る方法は、まだ誰も知らなかった。
それを、人間の体で確かめる。空軍大尉ジョセフ・キッティンジャーは、気球で成層圏へ昇り、そこから飛び降りた。
最初の跳躍で、彼は毎分百二十回の回転に巻き込まれ、意識を失う。原因は、凍った湯たんぽと、三度引いた一本の紐だった。
元海軍の落下傘整備員は、切れるように作った紐を縫った。生命維持担当の軍曹は、ヘルメットの帯を針と糸で縫い合わせた。名前も残らない技術者たちが、一人の男を生きて帰すために、黙って手を動かし続けた。
そして一九六〇年八月。
吊りかごには、五歳の息子がシリアルの箱から切り抜いた、紙のナンバープレートが貼られていた。
高度三万一千メートル。右手の異常を隠したまま、男は「世界で一番高い一段」に立つ。
実話をもとに、英雄ではなく「帰ってくる人間」を描く、全十二話の歴史小説。
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