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SM 2026/08/28 公開 2026/09/04 10:57 更新
―風が止まっても、俺はピッチを去らない―
「お前は速い。だが、それだけだ」
高校一年生の神谷蓮は、誰よりも速く走ることができる。
左利き。
一瞬でトップスピードまで到達する異次元の加速。
50メートル走なら、同年代に敵はいない。
本人も、自分が特別な存在であることを疑っていなかった。
――俺は、世界一になる。
そのためなら、何だってできる。
高校サッカーで頭角を現し、18歳でプロ入り。
やがて海外へ渡り、世界最高峰の舞台へ。
順風満帆に見えたサッカー人生。
しかし、世界はそんなに甘くなかった。
才能だけでは勝てない。
努力しても報われない。
愛する人を傷つけることもある。
仲間と別れることもある。
そして何より――
彼の最大の武器である「速さ」は、永遠ではなかった。
度重なる怪我。
失われていく身体能力。
若い選手たちに追い抜かれる恐怖。
30歳を過ぎたある日、神谷蓮は言われる。
「もう、昔のようには走れない」
かつて「日本で最も速い少年」と呼ばれた男は、そこで初めて自分の人生と向き合うことになる。
速さを失ったら、自分には何が残るのか。
その答えは、十年以上かけて積み上げてきた「別の才能」の中にあった。
見る力。
考える力。
人を動かす力。
試合を読む力。
そして――
サッカーを愛し続ける力。
これは、16歳の少年が世界を夢見る物語ではない。
夢を追い、何度も挫折し、傷つき、失い、それでもピッチに戻り続けた一人の男の22年間を描く物語。
少年はやがて、世界最高のウイングを目指す。
そして最後には――
世界で最も長く、サッカーを愛した男になる。
風が止まっても、俺は走る。
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