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久遠-kuon- 2026/10/10 公開 2026/10/10 02:30 更新
地球が滅びなかった、初めての朝。
小惑星「セオ」は割れることなく地球の重力圏を逸れていった。世界は、知らないうちに救われた。発表されたのは「軌道計算上、衝突の可能性はゼロになった」という素っ気ない一文だけ。三年分の極限の研究と、四人の命を削った成果は、政府の声明文の三行に圧縮された。それでいい。誰にも知られないまま終わるのが、このプロジェクトの正しい終わり方だった。
その朝、フィルウ・ブランシャールは震える手でカップを置き、こう言った。
「五十年経ちません。たぶん」
「セオ」の軌道を狂わせていた小型天体群は、ただの小天体ではなかった。彼らは何かを運んできていて、それはもうすぐ近くまで来ている。後に「銀嵐」と名付けられることになる脅威との、長い戦いの最初の朝だった。
だが世界は、二度目の終末を信じたがらなかった。
「ついこの前、隕石衝突を回避したばかりだろう」――その一言が、彼ら全員を殺していく。
壇上で撃たれた者。方舟の設計図を密かに送ろうとして拘束された者。留置施設で口を塞がれた者。そして、最後にひとり残された者。
これは、世界を救った四人が、誰にも信じられないまま燃え尽きていく十五年の記録。
※この物語はフィクションです。実際の人物・団体とは関係ありません
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