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ありんこ 2026/09/14 公開 2026/09/14 18:50 更新
二歳の娘・莉央を突然亡くした母親。
もう一度「ママ」と呼ばれたい――。
その願いとは裏腹に、なかなか子どもには恵まれず、五年後、ようやく男の子・陽向を授かる。
莉央とは性別も、顔も、性格も違う。
それでいい。
この子は莉央の代わりではない。
そう自分に言い聞かせながら、母親は少しずつ喪失を受け入れていった。
陽向が二歳になった、ある日のこと。
街中で信号を待っていた彼女の耳に、小さな声が届く。
「……まま?」
振り返った先にいたのは、ベビーカーに乗った二歳ほどの女の子。
丸い頬。
笑ったとき、左の頬にできる小さなえくぼ。
――莉央?
もちろん、そんなはずはない。
女の子の名前は「紬」。
ちゃんと別の母親がいる、赤の他人の子どもだった。
それでも偶然の出会いを重ね、陽向と紬は幼なじみになっていく。
そして母親は気づき始める。
眠くなると左手を口元へ持っていく癖。
滑り台の上で一度立ち止まる仕草。
イチゴを食べる順番。
あまりにも、莉央と同じだった。
偶然。
全部、偶然。
そう思っていた。
――この子を「莉央」に近づけていたのが、自分自身だったと気づくまでは。
娘を失った母親が、十五年かけてもう一人の「娘」を作り上げていく。
これは母の愛なのか。
それとも――執着なのか。
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