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月華 2024/11/23 公開 2024/12/21 06:32 更新
思えば、幼い頃からお世辞にも婚約者に愛されていたとはいえなかった。
「俺は俺よりも馬鹿な奴の話は聞かない」
国母とは民の声を聞くものである。将来の王へ民の声を届けるため、汎ゆる勉強にのめり込み、気づけば学園で首席の成績を納めるまでになった。
「婚約者なら俺を立てろ」
成る程、国母とはこの国に生きる淑女の頂点である。死に物狂いで王妃教育を習得し、デビュタントの頃には既に押しも押されもせぬ淑女となっていた。
「馬にも乗れぬ無能とは出かける気にもならない」
「剣も魔法も俺よりも弱いやつには」
「魔術こそ極めるべきもので」
「医術が」
「芸術が」
婚約者が望むままに、努力を重ねた。いつしか、【イグニスフィア王国の月】と謳われるようになった。
そんな私に婚約者が放った一言は─────
「ルーナ・グラシエス!!貴様との婚約を破棄する!!」
「─────私とて蹴り飛ばす権利くらいはございますよね」
べきっと音を立てて手元の扇子が折れる。婚約者に肩を抱かれた男爵令嬢がびくりと肩を跳ね上げるのが見えるが、知ったことか。
『第一王子(あんなやつ)やめて、俺につかないか?』
かつて第二王子に囁かれた言葉が脳裏に過る。あぁ、上等だ。そっちがその気ならやってやろうではないか。
─────王位簒奪を。
※2024.12.10 第一章完結
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