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鷹司 怜 2026/06/12 公開 2026/06/13 21:30 更新
地方の無人駅で駅員として働く高橋誠司、五十五歳。十五年前に最愛の女性・山崎美咲を事故で失って以来、彼は結婚もせず、ただ淡々と日々を過ごしていた。高校時代から想い続けていた美咲に、ついに気持ちを伝えられなかったことが、誠司の心に深い後悔として残り続けていたのである。
ある六月の朝、誠司のもとに一通の手紙が届く。差出人は、死んだはずの美咲。手紙にはただ、「七月七日、桜並木へ来てください。赤い傘の少女に、この手紙を渡してください。今度こそ、間に合って」と記されていた。
半信半疑のまま約束の場所へ向かった誠司は、赤い傘を差した謎の少女・紬と出会う。紬は美咲の名を知り、さらに美咲から託されたという古い封筒を誠司に手渡す。しかし、自らの素性については語ろうとしない。やがて誠司は、美咲とある男性、そして幼い少女が写る一枚の写真を目にする。その男性は、美咲の夫だった神崎悠人――すでに亡くなったはずの人物だった。
紬との再会を重ねるうちに、誠司は美咲が遺した数々の手紙に導かれ、十五年前に封印した記憶と向き合うことになる。そこには、誠司の知らなかった美咲の想い、神崎の葛藤、そして一人の少女へ託された切実な願いが隠されていた。
死者から届く手紙がつなぐ、最後の約束。伝えられなかった「好き」という言葉と、人生を止めたまま生きてきた男の再生を描く感動長編。喪失の先にある希望と、愛された記憶は決して消えないという祈りを込めたヒューマンドラマ。
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