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花守かおるこ 2026/08/11 公開 2026/08/11 21:45 更新
「十年間、親の介護をしてくれてありがとう。おつかれー。じゃあ、離婚しよう」
義母の葬儀を終えた夜、立花葵は夫・圭介から、あまりにも冷たい言葉を告げられた。
結婚してから約十年。
葵は夫の両親と同居し、認知症を患った義父と要介護状態の義母を一人で支えてきた。
食事、排泄介助、通院、薬の管理、夜間の見守り。
夫は「仕事が忙しい」と言い、介護をほとんど手伝わなかった。
それでも葵は、家族なのだから仕方がないと耐え続けた。
だが、義両親の介護が終わった途端、夫は葵を「用済み」とばかりに切り捨てようとする。
しかも圭介には、二十六歳の部下・美香との不倫関係があった。
「妻とはもうすぐ別れる」
「親の介護が終わったら、一緒になろう」
そう美香に約束していたのだ。
圭介は、葵が何も知らず、泣いて家を出ていくと思っていた。
しかし――。
「離婚は構いません。ただし、私一人で条件を決めるつもりはありません」
葵は静かに弁護士へ相談する。
そこで初めて明らかになる、葵が十年間にわたって残していた記録。
介護日誌。
通院記録。
介護費用の領収書。
夫とのメッセージ。
介護を拒否した夫の発言。
そして、夫の不倫を裏付ける証拠。
「あなたが十年間してきたことは、何もなかったことにはできません」
弁護士・佐伯蓮の言葉に、葵は顔を上げる。
夫に捨てられたと思っていた十年間。
けれど、その十年間こそが、葵自身を守る証拠になっていた。
一方、離婚を急いでいた圭介は、慰謝料や財産分与の現実に直面し、次第に追い詰められていく。
さらに不倫相手の美香にも、思いもよらない現実が突きつけられる。
「私、あなたの老後の世話をするために付き合ったんじゃない」
家庭も、愛人も、会社での立場も失っていく圭介。
それでも彼は、最後まで葵が戻ってきてくれると思っていた。
しかし、もう遅い。
「十年間、おつかれさま。私」
すべてを清算した葵は、誰かの妻でも、誰かの介護要員でもない。
自分自身の人生を取り戻すため、新しい一歩を踏み出す。
**十年間、家族のために生きた妻が、最後に取り戻すのは――お金だけではない。自分の人生そのものだった。**
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