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桜木ひより 2026/11/06 公開 2026/11/06 18:00 更新
「君を愛することはない」
初夜の寝室で、侯爵ルーカスはそう言った。父親が決めた政略結婚。跡継ぎは、恋人の男爵令嬢ヴェラに産ませるつもりだという。
花嫁のゾフィーは、元王宮書記官。書類の話になると止まらない、書記官室でいちばんうるさい書記官だった。
「承知いたしました。では、念のため書面に。第一条、夫婦は互いの私室に立ち入らない。第二条、互いの手紙を開けない」
「よくしゃべる女だ」と吐き捨てて、夫は読みもせずに署名した。
一年後。黙っていろと言われ続けながら侯爵家の帳簿を立て直してきたゾフィーのもとに、離縁の審問の呼び出し状が届く。訴えは、妻の不貞。証拠は、夫が「妻の机の引き出しから、この手で見つけた」という恋文の束と、侍女の証言。
鑑定役として審問に呼ばれたのは、かつての上司、書記官長エーリッヒ。
恋文を手に取ったゾフィーの口が、一年ぶんの勢いで動きだす。
「旦那様。わたくしの机から恋文を見つけたのは、どなたですか?」
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