ヒューマンドラマ 短編

彼氏の幼馴染が私のスノーボードを奪って骨折させたのに、彼はその子を抱えて行ってしまった

熾星 2026/11/06 公開 2026/11/06 12:21 更新

あらすじ

 付き合って五年目。圭吾はようやく、私を実家に連れていく気になった。

 手土産には、きれいに包装された和菓子を選んだ。前もって買っておいたワンピースに着替え、緊張しながら玄関をくぐる。ところが、圭吾の母親である千鶴は、和菓子を玄関脇の棚に置くと、すぐにアクセサリーケースを開けた。

「彩乃、これ、おばあちゃんの形見なの。ずっとあなたのために取っておいたのよ。ほら、つけてみて」

 千鶴が差し出したのは、真珠のブレスレットだった。ソファに座っていた三輪彩乃は手首を差し出したものの、少しきついと眉を寄せる。すると圭吾が隣に座り、彼女の手を取った。

「こういうのはコツがあるんだよ。ハンドクリームを塗れば、すんなり入るから」

 圭吾がブレスレットをつけてやると、家族はそろって笑った。千鶴まで息子の腕を軽く叩き、「本当に気が利くんだから」と目を細める。

 笑い声が落ち着いたころ、千鶴はようやく私に目を向けた。

「真琴さん、気にしないでね。この子たちは小さいころから一緒だから、こういうことが当たり前になっているの」

 圭吾は彩乃の手首を確かめてから、こちらを向いた。

「真琴、彩乃にジュースを持ってきてくれない? 帰国したばかりで、まだ時差ぼけもあるだろうし」

 夕食が終わると、圭吾は私を玄関まで送ってきた。彩乃が今夜は実家に泊まることになり、客間も荷物でいっぱいだから、私はホテルを探して一晩過ごしてほしいという。

 圭吾は財布から一万円札を二枚抜き、私の手に押し込んだ。

「悪いけど、今日はホテルに泊まってくれないか。これ、宿泊代に使って」

 それから、彼は少し面倒そうに付け加えた。

「母さんからもらったものなんて気にするなよ。真珠のブレスレット一つで彩乃と揉めるな」

 手の中の紙幣を握りしめたまま、家の中から聞こえる笑い声を聞いていた。

 五年間、いつか彼の家族に恋人として認めてもらえる日を待ち続けてきた。けれど、ようやく招かれたその家で、私は泊まる場所さえ与えられなかった。帰国したばかりの幼なじみは、何の遠慮もなく、私がずっと欲しかった場所に座っている。

 玄関先に立ち尽くすのをやめ、夜の街へ歩き出した。

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