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朝吹龍一朗 2026/06/20 公開 2026/07/04 16:33 更新
五十代の会社員・秋津誠二は、ある夜、駅のホームで白い光に呑まれ、異世界へ落ちる。若返った肉体を得た彼には、人の好意、忠誠、後悔、恐怖、未練といった「想いの重み」が、色のついた糸や帯として見えるようになっていた。
森で出会った女騎士リュシエンヌは、部隊を失い一人生き残った後悔から、誠二に重すぎる忠誠を誓おうとする。誠二はそれを「主従」ではなく「同行の約束」へと言い換える。旅の途中、帰りたい魔物、師匠に謝れない薬師少女、謝ることを知らない竜娘カイラと出会い、誠二は想いを消すのではなく、持てる形に置き直す力を少しずつ覚えていく。
王都では、民を愛しながら誰にも個人として愛されていない王女イレーネ、そして祖国を愛するがゆえに戦争を止めようと裏切る敵国の女将軍アデライデと出会う。国家、戦争、忠誠、怒りの重みが誠二にのしかかる一方、彼自身もまた、元の世界で好意を読み違え、相手を傷つけたまま謝れなかった過去と向き合う。
やがて王都に「軽き神」が現れる。それは人々の苦しみ、後悔、愛情、怒りを軽くし、楽にしてくれる存在だった。だが、想いが軽くなった世界では、誰も泣かず、怒らず、誰も誰かを待たなくなる。帰還の道が開きかけた誠二は、その軽い世界に耐えられず、重みとは関係そのものだと悟る。
最後に誠二は、すべての重さを自分で背負うのではなく、それぞれの持ち主へ返し、軽き神にも「消す」のではなく「預かる」役割を与える。リュシエンヌは改めて言う。「主ではなく、隣にいてください」。誠二は、帰る日まで彼女の隣に立つことを選ぶ。
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