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熾星 2026/10/27 公開 2026/10/27 17:27 更新
難産の末、一晩かけて娘を産んだ。
けれど、抱く間もなく、夫と家族は赤ちゃんを篠宮真帆に渡してしまった。
夫の瀬尾直哉は娘の頬を撫でた。
「真帆、口元も鼻もお前に似てるな。名前も考えてやってよ。大きくなったら、真帆にもなついてくれるといいな」
兄の篠宮雅臣が笑った。
「何言ってるんだ。この子は真帆のかわいい娘だろ。大きくなって真帆を大事にしなかったら、俺が許さないからな」
両親まで目を潤ませていた。
「真帆は出産で体形が変わるのを気にしてたものね。これで将来も寂しくないわ」
母は真帆の腕が疲れないかと気遣っている。
私は大量に出血し、点滴につながれたまま震えていた。家族は真帆を囲んで笑い合い、こちらを見ようともしない。
どうにか直哉の服をつかんだ。
「直哉……この子、結菜って名前にしたいんだけど。どうかな?」
母の笑みが消えた。
「紬、そんなことで張り合わないで。あなたが帰ってきてから、真帆がどれだけ我慢してきたと思ってるの? いろんなものを譲ってもらったんだから、これくらいいいでしょう」
私は手を離した。
十六歳のとき、篠宮家に捜し出された。私こそが実の娘で、真帆は血のつながらない子だと聞かされた。
家に迎えられてからは、いつも真帆を優先するよう言われた。部屋も服もアクセサリーも譲り、父や母、兄に甘えることさえ遠慮した。
いつか家族として受け入れてもらえると信じていた。
それなのに、命がけで産んだ娘まで渡せと言う。
空っぽのベビーベッドを見つめ、布団を握りしめた。
体が回復したら、結菜を連れて出ていこう。
この家には、もう帰らない。
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