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灰路 2026/10/18 公開 2026/10/25 12:00 更新
祖母の遺した銭湯で、知らない男が湯に浸かっていた。
三森千夏、三十五歳。
「君のためだよ」が口癖の夫と別れて、ひと月。
祖母の死に目に会えなかった後悔を抱えたまま、下町の古い銭湯「月見湯」を売りに出すつもりだった。
なのに、閉めたはずの銭湯の湯船には、ペンキのにおいのする年下の男。
葛城蒼、三十二歳。全国に数人しかいない「銭湯絵師」。
祖母に頼まれて、壁の絵を描き直しに来たのだという。
「売るんですか、ここ。――その前に、ハルさんのノートを読んでください」
祖母の最後の願いは、冬至の柚子湯で、月見湯を「しまい」にすること。
冬至まで、あと五か月。
無愛想な敬語の絵師と、口の悪い常連たちと、ひとつ屋根の下の再出発がはじまる。
閉店後、男湯と女湯に分かれて入る「しまい湯」。
壁ごしにだけ、なぜか素直になれる。
――ねえ、湯加減はどう?
なくなるものを、それでも愛すること。
大人の女性のための、湯けむり再生ラブストーリー。
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