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星渡リン 2026/07/25 公開 2026/10/28 06:00 更新
王太子アルフレッドには、身分違いの恋人リリアがいる。
その事実を二年前から知っていた婚約者、公爵令嬢エレノアは、二人の恋を邪魔するどころか、秘密が醜聞にならないよう陰から支えてきた。
逢瀬のために変更された公務の日程を整え、リリアを夜会へ招き、贈り物を手配し、将来に備えて教師まで用意する。
そしてアルフレッドがリリアを正式に選ぶなら、婚約を解消することにも異存はなかった。
ただし、公表する前には必ず自分へ知らせること。
それだけは約束していたはずだった。
ところがアルフレッドは自身の誕生日夜会で突然リリアを壇上へ上げ、
「誰かを傷つけることを恐れ、私たちは長く耐えてきた」
と、二人の恋を美しい物語として語り始める。
招待客の視線は、なぜかエレノアへ。
まるで彼女が、二人の真実の愛を阻んでいたかのように。
エレノアは反論しなかった。
ただ静かに婚約解消を受け入れて、告げる。
「それでは、私が殿下の婚約者としてお預かりしていた役目も、すべてお返しいたします」
翌朝、王宮へ届けられた大量の引き継ぎ書類。
三週間後の大夜会。
招待客の調整。
リリアの教育。
完成間近のドレス。
公爵家が負担する予定だった費用。
今まで何事もなく進んでいたのは、誰かが黙って片づけていたからだった。
そして最後に添えられた、一通の手紙。
――王子の秘密の恋を守った皆様へ、後始末も皆様でどうぞ。
エレノアは復讐しない。
秘密も暴露しない。
二人の恋を壊すつもりもない。
ただ、もう代わりに片づけないだけ。
恋に拍手を送った王子と恋人、王妃、側近たちは、自分たちが選んだ未来の重さを初めて知ることになる。
そして役目を返したエレノアにもまた、「誰かのため」ではない新しい仕事と未来が動き始めて――。
他人の恋を守り続けた公爵令嬢が、自分の名前と時間を取り戻していく、婚約解消から始まる後始末のお話。
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