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UK 2026/10/09 公開 2026/10/09 17:15 更新
「リディア・エルストン。お前との婚約を、ここで破棄する」
王宮の大広間に、第二王子クラウス殿下の声が響いた。
楽団の音が止まり、ドレスの衣ずれも止まる。
シャンデリアの光の下で、何百という目が、いっせいに私を見た。
私はエルストン伯爵家の長女で、十九歳。
栗色の髪をいつもひとつに編んで、指先には落ちないインクの染みがある。
華やかさとは縁のない、よく言えば落ち着いた、悪く言えば地味な令嬢――それが、社交界での私の評判だった。
殿下と婚約して、五年になる。
そのあいだに殿下が私の名前を優しく呼んでくれたことは、たぶん一度もない。
それでも、王家と結ばれた約束を守るのが私の役目だと思って、今日まで黙って隣に立ってきた。
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