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宝田旗子 2026/07/17 公開 2026/07/30 07:00 更新
中学三年生の橘瑠璃は、母からヴァイオリンに触れることを固く禁じられていた。
理由を尋ねても、母は何も答えてくれない。
それでも音への憧れを捨てられない瑠璃は、父が密かに用意してくれたヴァイオリンを抱え、市民音楽ホールの使われていない旧練習室で、誰にも知られないよう弾き始める。
そんな秘密の時間に現れたのは、オーストリアから来日した天才少年、フリッツ・シュナイダー。
圧倒的な技術を持つ彼は、瑠璃の未熟な演奏を容赦なく指摘する。
「逃げ場所にしているだけなら、やめた方がいい」
冷たい言葉に傷つきながらも、瑠璃は彼の音に惹かれていく。
しかしフリッツもまた、亡き師から託された一挺の古いヴァイオリンと、消せない嫉妬を抱えていた。
母が音楽を恐れる理由。
若くして亡くなった天才ヴァイオリニスト・花岡香織。
海を越えて守られてきた楽器。
そして、瑠璃が幼い頃に聴いた、忘れてしまった最初の音。
封じられていた過去が明らかになるとき、瑠璃は問われる。
母に嫌われることを恐れ、好きな音を諦めるのか。
それとも、自分の意思で舞台に立つのか。
不完全な少女と孤独な天才少年が、互いの音を聴きながら一歩ずつ進んでいく、秋色の音楽青春物語。
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