異世界恋愛 完結・全12話

あなたが召し上がっていたのは、私の記憶です

九葉(くずは) 2026/08/02 公開 2026/08/02 13:14 更新

あらすじ

十年、彼女は朝いちばんに厨房へ降りた。
夜明け前に火を入れ、湯を沸かす。
伯爵夫人がする仕事ではない。

亡き義母の煮込み。
熱を出した義妹の粥。
どれも彼女の舌と記憶だけで作られていた。

作り方は、どこにも書かれていない。
書かなかったのは、彼女の意地だった。

エルシャには前世の記憶がある。
その記憶は、年ごとに一つずつ消えていく。
忘れられることの痛みを、彼女は知っている。

だから誰かの大切な味を、覚え続けた。
覚えていることだけが、自分がそこにいる理由だった。

ある夜、夫は客人に告げる。
妻の手すさびです、と。
火傷の残る手は、卓の下に隠された。

翌朝、彼女は湯を沸かさなかった。

罵らない。
泣かない。
責めもしない。

ただ、台所を降りただけ。
それだけで、あの家から義母の味が消えていく。

行き先を決めないまま、彼女は街道の宿にたどり着く。
そこの主人は、素性も行き先も尋ねなかった。
かわりに、彼はこう問う。

あなたは何が食べたいのですか。

十年、誰にも聞かれなかった問いだった。
彼女はその答えを、一つも持っていない。

自分の空腹の名前を、彼女は思い出せるだろうか。

ポイント

総合ポイント 610
日間ポイント 0
日間ランクイン 1
最高順位 244
評価ポイント 55490.8% ブクマ×2 569.2%

日間ポイントは、なろうの18〜19時ごろの集計値です。

読者の反応

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8.66
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ブクマと評価ポイントの推移

10/29〜11/04(7日間)
ブクマ 28+0(7日間)
30 29 28 27 10/29 11/01 11/04
評価ポイント 554+10(7日間)
555 550 545 10/29 11/01 11/04

日別の値

新しい順・下の段は前日比
日付 ブクマ 評価P
11/04 28 ±0 554 ±0
11/03 28 ±0 554 ±0
11/02 28 ±0 554 ±0
11/01 28 -1 554 ±0
10/31 29 +1 554 +10
10/30 28 ±0 544 ±0
10/29 28 ±0 544 ±0

「全期間」は直近30日分までを表示します(リアルタイム表示では、これに現在値が加わります)。

総合ランキングの推移

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