異世界恋愛 連載中・全1話

幼女は夢を見る

夕月 2022/09/28 公開 2022/09/28 08:26 更新

あらすじ

薄暗い森の中、小鳥の囀りよりも不気味な怪鳥ががぁがぁと鳴き喚く、人も住まない未開の地ー。
じっとしているのも暇だからわたしは日課として散歩する。
目的地もなくだだうろうろと歩くだけ。疲れたら適当に横になるだけ。だけどこの森から出ようとは思わない。ここはわたしには安全な場所だったから。
「そこの者!少し待つのだ!!」
突然の大きな声で散歩していたわたしはビックリして振り向いた。
反射的にその声のする方を見やると馬に乗った素敵な服を着た少年が居る。
なんかキラキラしてるなぁ~と一瞬見とれてしまったけど…

うわーーーわわわーー

わたしはずりずりと後退りし充分に距離を取ってから腰を90度曲げて頭を下げた。
どこからどう見てもエライ人ってのが分かるから。

なんでこんな場所に人が居るの?
迷子になった?

頭を下げたまま声も出せずじっとしていると、彼はどうも馬から降りたらしく草を踏む足音がこっちに向かってくるのが聞こえた。

勘弁してよ…

わたしはドキドキ早くなる心臓の脈動に恐怖を感じ冷や汗を吹き出した。


「お前…何者だ?」


彼の鈴を転がすような声が聞こえた。
何者とはどういうこと?
わたしは一瞬何を言われたのか分からなかった。


「わ、わたしはノイといいます…」


緊張のせいか声がちゃんと出ず掠れてしまった。
冷や汗は止まることなく流れ続けて体もわなわなと震え始める。


「……ふぅ…何者かと聞いたのだが答える気はないのか…」


えっ?
わたしはわたしなのに…ただのノイとしか言いようがないのに…もしかしてわたしは化け物か何かに見えてる?
どうしよう…もう人にも見えない姿になってしまったんだきっと…

もう終わったのね…

わたしはこのままこの薄暗い森の中に打ち捨てられると覚悟を決めたら涙がとめどなく流れてきた。
頭を下げたまま地面の草に雨の様にぽつりぽつりと雫が零れる。


「顔を上げよ」
「はい……」


彼は泣いているわたしに冷たくそう言った。
わたしは鼻声で返事をし、涙を拭うこともせずゆっくりと顔を上げる。
わたしの視線が徐々に彼の素敵な白地の洋服の足元から腰元へと上がり胸元で固定される。

汚れ元の色を失くし長い年月で風化し始めたわたしの服と違い綺麗な刺繍が施された洋服ー。
わたしには一生縁のない素敵な服を滲む目で見つめる。




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