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佐歩 薫 2025/08/27 公開 2025/08/27 07:55 更新
「苦しむあなたを見て何も思わずにいられるほど、私の心は強くありませんでした」
玲湲《れいえん》は、忌み神《いみがみ》となった玄蛟《げんこう》にそう告げた。
五行神《ごぎょうしん》が守護する五壌《ごじょう》大陸。
黄麒《こうき》を守護神とする皇帝一族が建国した「夌《りょう》」は長く安定し、史上最も繁栄した国家となった。
先代皇帝の悪政によって一時国は乱れたが、新しく即位した皇帝は夌を立て直すべく政策を練り、復興を目指した。しかし先帝時代から雨が激減し、各地の水源も涸れ、水不足で農作物が育たなかった。食料供給は不安定なままで、復興はおろか国の根幹が危うくなっていく。
祭祀を司る神儀台《しんぎだい》が儀式を行うと、先帝時代に悪政が蔓延ったために、皇帝一族が持つ土の行《ぎょう》が水の徳を司る神、玄蛟を蝕み、忌み神にしてしまったと判明する。
そして、水の徳を持つ家の娘を巫女として玄蛟に仕えさせればその力が戻るという黄麒の神託が下った。
皇帝は、巫女として玄蛟に仕えた娘が見事役目を果たした暁には皇太子妃として迎えると宣言する。
玄蛟は人間を嫌い、しばしば水害をもたらす気難しい水神として知られていたが、娘を皇太子妃にできるならばと多くの貴族が娘を送り出した。しかし巫女の務めを果たせた者は一人もおらず、全員が戻って来てしまった。
玄蛟の力が弱ったままでは干ばつが続いて飢饉が深刻化していくばかりであるため、皇帝は頭を悩ませる。
そんな中、水の徳を持つ湛《たん》家の忠冀《ちゅうき》が、娘を巫女にすることを申し出た。
そして、忠冀の二人の娘のうち、妹の玲湲が巫女となり玄蛟の元へ向かった。
家族の思惑を知りながらも、務めを果たす覚悟を決めて。
◆主な登場人物
玲湲《れいえん》
主人公。
玄蛟に水の徳を与えるために巫女となった。
一見おとなしそうなので誰にでも従順かと思いきや、一度覚悟がガンギマると曲げようとしないド根性一点突破型。
玄蛟《げんこう》
五行神の一柱。
先代皇帝の悪政のために忌み神となってしまった。
紫緊《しきん》
いつも笑みを浮かべている謎多き綺麗なお兄さん。
玲湲と共に儀式を行う。
左漣《されん》 右漣《うれん》
人間の少年の姿をしているが五行神の眷族。
玲湲の巫女の務めを手伝ってくれる。
貴重な癒し枠。
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