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月 影丸 2022/02/12 公開 2022/03/30 20:00 更新
ここハントシュー大陸には、たくさんの人族に混じって共存する魔族がいた。
彼らは皆金色の瞳を持ち、自らと相性の良い属性の魔法を使えたという。それ以外には人族と何ら変わらない種族であった。
彼らの魔力の源は"魔素"と呼ばれる空気中に混じっている元素のようなものであった。
ロザンナ暦1250年のある日、それは突然起こった。
ある山奥の村の魔族たちは口々にこう言った。
魔法が使えない、と。
その現象はあっという間に大陸中に広がり、魔族は魔法を使えなくなった。
体調に変化はなく、魔法だけが使えなくなったのだ。それにより、もはや人族との違いは瞳の色だけとなった。
研究者たちはその原因の分析を急いだが、何もつかめないまま数年が経過した。
魔族の中には誇りを失ったと自害する者も現れ、しばらくは混乱が続いたものの、魔法を使えなくなってから15年後にはどうにか落ち着きを取り戻した。
その頃にようやく原因が究明され、"空気中の魔素の消失による魔力生成不全"と判断された。
世界から魔素が失われたという噂は、世界中に広まった。
生まれてきた魔族の子どもたちは金色の瞳でないことも多くなり、金色の瞳の者は徐々に居なくなっていった。
こうして、世界に魔素や魔族が存在していたことは時代とともに忘れられていった。
時は流れ、ロザンナ暦1550年。
魔法はすっかりと息を潜め、発電方法の確立、石炭の利用などによる産業革命が起こり、世界には馬車に変わる自動車や汽車などの新しい乗り物が登場するなどし、人々の生活には大きな変化が見られた。
世界の各地では貴族と平民の隔たりは少しずつ薄れ始め、今では貴賤の婚姻すらも徐々に認められるようになってきた。
ここ数十年は大きな戦争もなく、"ロザンナ暦で最も穏やかな刻"とも言われている。
これはそんな時代に生きる、ある"能力"を持つ女性のお話。
彼女は今日も彼らの聲を聴く。
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