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ちとせ鶫 2026/05/08 公開 2026/07/27 07:00 更新
2030年、春。
麻倉実結は、自分の居場所を見失っていた。
誰とでも繋がれる時代。 けれど、そのどこにも自分がいる気がしなかった。
そんなある日、彼女は気づけば1998年の札幌に立っていた。
携帯電話もSNSもない。 フィルムカメラがまだ現役だった時代。
戸籍も身元も行き場もない実結を拾ったのは、私立東札幌高校の化学教師・五味織江。
実家の写真館との間に複雑な過去を抱えながらも、生徒たちを静かに見守る一人の教師だった。
織江に導かれ、実結は東札幌高校写真部へ足を踏み入れる。
そこで出会ったのは、後に母となる少女・佳奈。 個性豊かな先輩や後輩たち。 そして暗室に漂う、停止液の匂い。
春の体育祭。
夏の円山動物園と小樽合宿。
豊平川の花火。
秋の修学旅行。
そして、文化祭。
一度シャッターを切れば、二度と撮り直せない銀塩写真の時代。
仲間たちと写真を撮りながら、実結は少しずつ知っていく。
写真に残るもの。
写真には残らないもの。
そして、人が誰かと過ごした時間の尊さを。
これは、未来から来たひとりの少女が、 フィルムの時代で過ごした一年を通して、 失くしたはずの光と居場所を見つけていく物語。
あの、忘れられない停止液の匂い。
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