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くらたん 2026/11/05 公開 2026/11/05 12:39 更新
「おじいちゃん、そんな顔で睨むと、また子どもが泣きますよ」
私、リスベットが声をかけたのは、十八歳の青年。どんな令嬢の誘いも断る、学園一の女嫌いだ。
彼は目を見開き、次の瞬間、その場に膝をついた。
「もう一度、僕と結婚してください」
私は知っている。この人が朝に弱いことも、嬉しいと右の耳が赤くなることも。
だって私たちは、七十年連れ添った夫婦なのだから。
小さな店を営み、よく笑って暮らした一生。その最後に並んで眠りについたはずの二人は、まだ恋人ですらなかった十八歳の春へ戻っていた。
ついさっき私を「帳簿女」と呼んで婚約を破棄した元婚約者様は、開いた口がふさがらないご様子。
今度も、この人と結婚する。けれど今度は、結婚のために互いの夢を片づけたりしない。
先生になりたかった私と、絵描きになりたかった夫。卒業までに、夢への一歩と結婚資金を。若い体はよく動くのに、手をつなぐだけで、なぜか昔より照れてしまう。
ただ、夫には、七十年間一度も私に話さなかった願いがあるらしい。
「あなた、私に隠し事をしていますね?」
「君だって、僕の知らない顔で笑うようになった」
長年の夫婦が初恋から始め直す、二度目の新婚準備。今度の人生も、あなたと幸せになります。
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