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灰野 識 2026/06/11 公開 2026/06/18 22:10 更新
前世で何万もの死を「表の上の数」としてしか見られなかった感染症医・椎名玲。一度も死者の手を握れぬまま路上で果てた彼は、疫病で三人に一人を喪い、大国の捨て駒にされた弱小辺境ノルデンの末子クレフとして転生する。
村人は彼を「死神」と呼ぶ。死人が出るたび、その名を石板に刻んで回る青年を。だがその「数えること」こそが、誰が次に倒れるかを言い当て、やがて村ひとつを、領ひとつを、死の理から引き剥がしていく。
彼の武器は剣でも魔法でもない。「原因」という概念すらないこの世界で、前世の知識は半分しか効かない。本当の武器は、その知識を、女神の罰しか知らぬ民にどう「信じさせる」かだった。
救った命は人口になり、人口は田を、税を、兵を生む。やがてノルデンに攻め入る帝国の軍は、剣を一度も交えぬまま陣中の疫病に削られ、「あの領だけ兵が死なない」恐怖が大陸を動かしはじめる——だがクレフの善意は諸刃だ。全員を救うため、彼は時に少数を見殺しにする選別を強いられる。
治す者が、国を治す。救う者は、いつ見殺しにする者になるのか。剣ではなく「人が死なない国」という一点で覇権図を書き換える、医療・公衆衛生×内政群像戦記。
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