純文学 短編

#036『雨の匂いが変わるまで』

いわたとおる 2026/10/28 公開 2026/10/28 19:00 更新

あらすじ

 傘を失くした夕暮れ。駆け出した雨の中で、私の何かが動き出す……。

 雨の日の匂いは、どこか鉄の味に似ている。
 人の輪に入っていくのが苦手で、いつも静かに時間が過ぎるのを待つ高校生の吉野萌夏。
 六月の放課後、下駄箱にあったはずのビニール傘が消えていた。
 途方に暮れる萌夏が出会ったのは、同じように置き傘のないクラスメイトの橘隼斗。
 ずぶ濡れになりながら校門を飛び出していった彼の背中を見つめるうちに、萌夏の胸の中に芽生えたのは、逃げるのではなく雨の中へ足を踏み出す勇気だった。
 雨の冷たさと温かな記憶が交錯する、等身大の甘酸っぱい青春ドラマ。

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