ホラー 短編

姉が死んで三日後、村中全員の骨が腐り始めた

熾星 2026/10/26 公開 2026/10/26 18:01 更新

あらすじ

 姉の身体からは、不思議な香りがした。

 金木犀とも桜とも違う。熟れた野の実を、冷たく湿った古木の奥に埋めたような、甘く重たい香りだった。いつまでも嗅いでいると、身体の芯までじんわり温まってくる。

 母は金のために姉を西側の離れに閉じ込め、集落の人々に香りを嗅がせていた。

 最初に訪れたのは、重い病を患った老人だった。その後、長年咳に苦しむ男や、足腰の弱った女がやって来た。香りを嗅げば厄が落ち、運までよくなるという噂を聞きつけ、遠くから訪ねてくる者もいた。

 彼らは金を持って家を訪れ、帰る頃には命拾いでもしたかのような顔をしていた。姉の香りを褒め、その不思議な力を会う人ごとに語って回った。

 姉は日に日に痩せていった。それなのに、身体から漂う香りだけは、ますます濃くなっていった。

 その年の冬、母は十万円を受け取り、姉に香りを強める薬を飲ませた。

 大勢の人間が見守るなか、姉は自分の手首を力任せに折った。砕けた骨が皮膚を突き破り、血が壁に飛び散った。

 途端に、むせ返るほど甘い香りが部屋いっぱいに広がった。

 人々は姉を取り囲み、最後の一滴まで搾り取るように香りを吸い込んだ。母は戸口に立ち、姉の血がついた手で、受け取ったばかりの札束を数えていた。

 姉は死んだ。

 息を引き取る直前、姉は言った。

「私から奪ったものは、みんな返してもらうから」

 通夜の晩、姉の棺の中から、鈍い音が三度響いた。

 三日後、香りを嗅いだ者たちの身体が腐り始めた。村長は砕けた骨を吐きながら我が家の庭へ這い寄り、母に金を返せと泣き叫んだ。

 母もまた、金箱を抱えたまま手首が裂け、黒く腐った骨が皮膚の下から突き出してきた。

 それでも、この借りはまだ清算しきれていない。

 私は知っていた。

ポイント

総合ポイント 302
日間ポイント 64
日間ランクイン [未取得]
最高順位 [未取得]
評価ポイント 28494% ブクマ×2 186%

日間ポイントは、なろうの18〜19時ごろの集計値です。

読者の反応

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8.61
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ブクマと評価ポイントの推移

10/27〜10/30(4日間)
ブクマ 9+8(4日間)
10 5 10/27 10/28 10/30
評価ポイント 284+240(4日間)
200 100 10/27 10/28 10/30

日別の値

新しい順・下の段は前日比
日付 ブクマ 評価P
10/30 9 +3 284 +50
10/29 6 +3 234 +66
10/28 3 +1 168 +78
10/27 2 +1 90 +46

「全期間」は直近30日分までを表示します(リアルタイム表示では、これに現在値が加わります)。

総合ランキングの推移

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