空想科学 連載中・全5話

バーチャナイト ―嘆きの空に光を―

源三郎 2026/11/06 公開 2026/11/06 17:19 更新

あらすじ

 人の嘆きで、電気も水も兵器も回る世界がある。

 軍の殺戮機械は、弾を撃たない。半径三キロの人間から、恐怖と絶望を根こそぎ吸いあげて動く。だから軍は、民を飢えさせ、おびえさせ、うつむかせる。幸福は、燃料の目減り。笑いの多すぎる区画は、見せしめに消される。

 ――笑うことさえ罪になる。そしてこの世界では、それが「正義」と呼ばれている。

 スラムの最下層に生まれ、管理タグも持たず、ただ奪われてきた少年、ナユタ。わずかな水を人に分け、こっそり明日を願う。たったそれだけで、彼は体制の帳簿では「悪」だった。

 死の淵で、ナユタは母の形見の旧式PC〈アーク・ドライブ〉を起動する。目覚めたのは、彼の血に眠っていた、人類より前に栄えた先史種族の力。幼いころ両親が幾重にも封じたその力が、戦うたびに、鎖を一枚ずつ解いていく。――痛みとともに、失ったはずの力も、思い出せなかった過去も、取り戻しながら。

 そして顕現したのは、銀の髪と金の瞳を持つ、光の少女――メモリア。軍が「規格外のバグ」と呼んで消そうとする、愛と祈りを火力に変える切り札。ひとりで抱えれば呑まれる力も、仲間の、人々の祈りを束ねるほど、少女も、少年自身も、青天井に強くなっていく。

「絶望の兵器より、おれの騎士のほうが、ずっと強い」

 民を狩って笑う将校を少女の一撃がまとめて粉砕する。感情を殺したはずの格上の兵すら、その光を前に、本能で後ずさる。だが本当の敵は、頂点に座す冷徹な男――愛を“バグ”と切り捨て、嘆きで世界を回す支配者、シュナイダー。

 なぜ両親は、わが子に力を封じて消えたのか。かつて栄えた先史種族は、なぜ滅んだのか。そして、強くなるほど少女の奥で疼く、あの“底”の気配とは、何なのか。

 奪われるだけの側で生きてきた少年は、もう、うつむかない。

「せめて最後まで、あんたらにとって都合の悪いほうの人間でいてやる」

 ひとりで背負えば、呑まれる。けれど、絆を束ねれば、青天井に強くなれる。感情が通貨の監視社会で、最弱の“バグ”が、偽りの「正義」に牙を剥く。切なくて、熱くて、まっすぐな下剋上――いつか、ふたりで本物の海を見るために。

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