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雉白書屋 2024/05/01 公開 2024/05/01 17:00 更新
「あのー、すみませーん」
「はい?」
「週刊吉報の者なんですけど。伊原さんですよね?」
と、夕方。街中で声をかけられたおれは一瞬、戸惑った。どうやらこの週刊誌記者らしき男はおれを伊原という男と勘違いしているらしい。おれは伊原なんて男は知らないが、おそらく芸能タレントだろう。これは面白い。おれが「ああ、はい……」と訝しがるように返事をしてやると記者はどこかホッとしたような表情をし、またすぐに顔を引き締め、言った。
「今、話題のあの件なんですけどー」
どうもこの口調からして、伊原はなにかやらかしたようだ。おれはその話すら知らないが、目の前のこの記者のことはわかる。この記者は自分の立場が強いと思っており、嗜虐心がくすぐられているのだろう、少しニヤついていた。
だが、おれは伊原なる男ではない。後ろめたいことなどないのだ。
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