純文学 連載中・全8話

遊園地の忘れもの

松山 さくら 2026/10/10 公開 2026/10/17 13:30 更新

あらすじ

作品梗概
 何げなく覗いた学生会館を覗いた圭太が見つけたのは、遊園地のアルバイト募集広告。自分を変えたいと思った圭太は、思い切ってそのアルバイトに応募する。
 始めての日に出会ったのは、義郎さん。会社を定年退職した元エンジニアの義郎さんは、圭太の教育係になった。
 圭太に任されたのは、メリーゴーランド。仕事自体は簡単なものだったが、なぜか義郎さんは客がいないときも遊具を丁寧に磨き上げている。そのことを不思議に思っていたのだったが……。
 そんなある日、中学時代からの友人の大樹に、遊びに誘われた。この大樹、引っ込み思案な圭太とは違って明るく積極的、それに流行に敏感な姿は、圭太の憧れでもあった。だけど、そんな大樹が、自分の生き方に悩んでいることを垣間見る。
 順調にアルバイトをこなしていた圭太は、義郎さんに感化されて、次第に自身の進むべき道について模索し始めたのだが、日が経つにつれて、義郎さんに暗い過去があることを知ることになった。それは、結婚して早々に妻と離婚したこと。妻と出会ったのも、デートをしたのもこの遊園地であったと言う。いわばこの遊園地は、義郎さんの思い出の場所でもあり、義郎さんがこの遊園地のために力を注いでいる理由が、圭太には分かったような気がした。
 昨年、大好きだった母方の祖母が病気で亡くなった。娘である母が生まれる前に夫を亡くしてからは、女手一つで母を育ててきた祖母。孫の圭太にも深い愛情をもって接してくれていた。
 そんな祖母がかつて住んでいた家を、掃除するために訪れた圭太。ふと、祖母が宝物箱と呼んでいた箪笥の抽斗を思い出す。大事な物をしまっていたはずの、その中に残されていたのは、五十年前の消印が押された一通の封筒。その差出人の名前を見た圭太は、ある思いに駆られる。奇しくも、封筒に入っていたのは、未使用の遊園地の入場券。親子三人で遊園地を訪れることを願っていたその人が送ったものだと確信した圭太は、それを亡くなるまで大事にしまっていた祖母に思いを馳せる。
 クリスマスイブの日、圭太は両親を遊園地に誘う。両親の仲を深めて欲しかったから。だけどそれ以上に、叶えたかったことがあった。それは、親子三人でメリーゴーランドに乗ることを夢見ていた義郎さんの願いを叶えること。母に、祖母の家で見つけた入場券を手渡した圭太は、母と義郎さんが再会するのをそっと見守っていた。

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