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ひとひら 2026/03/26 公開 2026/10/20 02:42 更新
全九州ジュニアベスト4。
高校でもテニスを続け、その先を目指すはずだった中牟田栞は、入学直前に大型バイクの事故に遭う。
右脚に大怪我を負い、長いリハビリと消えない傷痕を残された栞は、自らテニスを捨てることを決めた。
そんな彼女の前に現れたのは、甘露寺かなた。
細い身体。黒髪に混じる一房の白い髪。そして、異様なほど正確で美しいスイング。
全国優勝、世界ジュニアランキング三位。
かつて将来を期待された天才だった彼もまた、大きな病気によってテニスを奪われていた。
「できるのにやらないのは勿体ないって思っちゃったんだ。僕は、やりたくても思いっきりできないから」
その言葉に傷つき、腹を立て、それでも栞は彼から目を離せなくなる。
彼が打つ。
栞の身体が先に動く。
栞が打つ。
彼が同じ場所へ返す。
何度もそのテニスを見て、何度もそのボールを受けるうちに、栞の身体には少しずつ彼のリズムが刻まれていく。
傷痕を好きになれないまま。
事故を許せないまま。
失ったものを、失ったまま。
それでも栞は、自分の脚で、自分の人生をもう一度選び始める。
そして、かなたもまた、病気の向こう側に置き去りにしてきた「生きたい」という願いと向き合っていく。
これは、傷を克服する物語ではない。
愛する人を救える物語でもない。
それでも誰かと出会い、その人から受け取ったものを身体の奥に遺したまま、自分の人生を生きていく少女の物語。
「私は、君の彼女でよかったとよ」
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