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雉白書屋 2026/10/12 公開 2026/10/12 11:00 更新
「○○菌つけたー!」
「うあっ!」
「はははっ!」
ある日の昼休みのことでした。朝から降り続いていた雨はいっこうに弱まる気配を見せず、窓ガラスには絶えず雨粒が打ちつけられていました。厚い雲に覆われた空は、まだ昼過ぎだというのに夕方のように薄暗く、校庭には水たまりがいくつもでき、湿疹のように広がっておりました。
普段なら昼休みのチャイムが鳴った途端に外へ飛び出していく男子たちでしたが、この日ばかりは教室に閉じ込められて、暇と元気を無駄に持て余していました。
そんな中、ふいに始まったのが例のふざけ合いだったのです。
たしか、きっかけはほんの些細なことだったと思います。誰かの小さな悪意から生まれたちょっとした思いつき。そしてそれに乗っかった小さな、小さなつむじたち。ただ、それだけのことでした。
ある生徒が、クラスの中でなんとなく気持ち悪がられていた生徒に触れた手を『○○菌』と呼び、別の子にこすりつける。菌をつけられた子は、また別の誰かに触れてなすりつける。そうやって教室中を逃げ回りながら、その生徒の名字を冠したまったく科学的根拠のない架空のウイルスを互いに移し合うという、まあ、どこの小学校でも見かけそうな単純な遊びでした。
けれど、そんないじめまがいの遊びが、まさかあんな奇跡を引き起こすことになるなんて、いったい誰が予測できたでしょうか……。
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