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野口読多 2012/09/14 公開 2012/09/18 15:17 更新
幽霊なんて浮ついた存在を、科学が一つのターニングポイントを迎えようとしている今のご時世になってもなお信じ込んでいる人というのは、僕が思うによほど入れ込んだ宗教家か、都市伝説を文字通り食い物としている哀れな自称霊媒師くらいだ。僕のお祖母ちゃんなんかは霊感が頗る強く、よく僕に「幽霊ってのはね、生きてる人間とそっくり同じで、近くにいても違和感なくその辺にいるのさ」などと吹聴していたものだが、残念ながら僕はこの目でその存在を知覚できたためしがなかった。あるいは祖母の言は、「近く」と「知覚」を掛け合わせた、かなり高度なダジャレだったのかもしれないと、安らかな眠りに就いてしまい確認もできない今ではそう思うまでになった。
誰だってそうだろう。いくら教科書のしかつめらしい文面を読もうが、人は自分で経験したことでないと真に学びの意味を考えたりしない。幽霊の問題もそれと同じで、どころかそれが非常にあやふやな定義の中を地に足つけた根幹も持たずに徘徊している分、いたく抽象的で、非現実的認識を抱かざるをえない。だから僕は、お祖母ちゃんが終生孫に語り聞かせた睦言を頭から疑って聞き流すのに申し訳なさを感じていなかった。それがいけなかったのだろうか。
けれど仕方がないじゃないか。無理もない話だ。誰だってまさか、自分がこういう体験をするだなんて、思いにもよらなかっただろう。まさか……
――自分が幽霊となって、見慣れた街を徘徊するようになるだなんて……。
(※このシノブシスは、本文中の一文です。ここに書かれている「僕」とは作者、野口読多を指すものでなく、登場人物の一人であります。また、本作はJUGEMブログにても掲載していきます)
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