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蜂月ヒル彦 2024/12/01 公開 2025/01/01 02:15 更新
私がまだ幼かったあの日、病床の祖母の魂を迎えに来た死神と出会った。
何も知らない私は、名前が無いと言うその死神にーーーーと言う名前を付ける。
幸運にも、と言うべきか、死神と私はそれから十年以上会う事は無く、故にあの日の記憶は薄れ、次第に自らが付けた彼の名前も、会話した事実さえ頭の中から消え去ってしまっていた。
あの日から時が経ち、ただの映画好きの女子高生に成長した私は、心待ちにしていたお気に入りのシリーズの新作を観に、学校帰りに映画館へと足を向ける。
変わり映えのない地続きの道。
知らない誰かの、内容の聞こえない話し声。
シネコンの暖房の効いたロビー。
新作映画の宣伝を繰り返すモニター。
昔からお世話になっている安い牛丼並盛。
文句無しの平凡だったのは間違いない。
だからあの音が聞こえた時、私は心底嫌な予感がしたのだ。
音の正体が何なのか分からないまま咄嗟に駆け出すと、声が聞こえる。
「逃げろ」
味方だと言うその声に導かれるままに私は走った。
そして私は、映画よりももっと不条理な、鏡合わせの世界へと半ば強制的に投げ出されていく。
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