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SYO 2026/11/04 公開 2026/11/04 18:53 更新
「君はいつも空ばかり見上げて、ため息をついている。まるで曇り空だ」
春の園遊会で、伯爵令嬢リーゼルは王太子ギルベルトから婚約破棄を告げられた。新しい婚約者は、笑顔で雲を払うという「晴れ乞いの巫女」。
王太子は、天気を一度も外したことのない「天を読む王太子」として知られている。
けれどその天気は、五年間、リーゼルが祖父の塔で晴雨計を読み、毎朝こっそり届けていた便りに書かれていたものだった。
殿下は、便りがどこから来ていたのかさえ知らなかった。
渡しそびれた最後の一枚には《本日午後三時、西より驟雨》。
リーゼルはそれを握りつぶし、二時半に会場を後にする。
その夜、晴雨計の針が見たこともない速さで下がりはじめた。
三日後、王国の護送船団が嵐の海へ出航する。
もう殿下には届かない警告を、誰に伝えればいいのか――。
塔の扉を叩いたのは、ずぶ濡れの艦隊提督だった。
「この字は、あなたのものですね」
空のことは、空に証明してもらいましょう。
のちに初代王立気象台長となる天気読みの令嬢と、船乗りの提督が嵐の夜を越える、約一万字の読み切り短編です。
※ざまぁは控えめ、ハッピーエンドです。
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