異世界恋愛 短編

宝物庫の扉の向こうで、六つの王女殿下が歌っている。鍵は折れた。息がもつのはあと一時間、わたしの髪の奥にはピンが二本

みぎみみ 2026/11/04 公開 2026/11/04 18:47 更新

あらすじ

「錠前いじりは下品だ。泥棒の手だ」
伯爵家の養女マリエットの実の父は、平民の王宮錠前師。七年前に父を亡くしてから、そのことは誰にも話さないよう言われてきた。
婚約者は毎朝、彼女の髪から細い鋼のピンを一本抜き取る。――髪の奥に、あと二本残っていることも知らずに。

王女殿下の六つの誕生祝い。年に一度だけ開く宝物庫の「百年扉」。
見物が終わり、長官が扉を閉めて鍵を回したそのとき、鍵が鍵穴の中で折れた。
扉の向こうの暗闇から、小さな声がする。「……お母さま? まっくら……」
壁を崩すには半日。子供の息がもつのは、一時間。

「変な気を起こすなよ。開けられなかったら、おまえのせいで王女殿下が死んだことになる」
百年扉の中の錠を十年前に作りかえたのは、わたしの父だった。
そして宝物庫長官は、十年前、この扉の前の床で錠前を開けていた女の子との約束を、ずっと覚えていた。

※約1万字の読み切り短編です。ざまぁは軽め、最後は甘く終わります。

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